三菱スペースジェット:夢と挫折

三菱スペースジェットの完成予想図。細長い胴体に2基のエンジンを搭載し、翼端にウィングレットを備えた近代的なジェット旅客機の姿

日本初の国産ジェット旅客機として期待を集めた三菱スペースジェット。その野心的な計画と直面した課題を詳しく見ていきます。

プロジェクトの始まり

2008年、三菱重工業は「三菱リージョナルジェット(MRJ)」として知られる国産旅客機の開発計画を発表しました。これは戦後初めての国産旅客機開発であり、日本の航空機産業にとって画期的な挑戦でした。

技術的な特徴

三菱スペースジェットは、70-90席クラスの小型ジェット旅客機として設計されました。最新の航空技術を採用し、燃費効率の良さと快適な客室環境を両立させることを目指しました。

三菱スペースジェットのコックピット内部。最新のアビオニクスシステムと大型ディスプレイを備えた先進的な操縦席

直面した課題

しかし、開発は順調には進みませんでした。度重なる納期の遅延、技術的な問題、そして認証取得の難しさなど、多くの障害に直面しました。これらの問題は、プロジェクトのコスト増大と市場での競争力低下につながりました。

プロジェクトの終焉

2020年10月、三菱重工業は三菱スペースジェットの開発凍結を発表。グローバルな航空業界の激変と累積赤字の拡大を理由に、長年の夢は一旦幕を閉じることとなりました。

残された教訓と今後の展望

三菱スペースジェットの開発は、日本の航空機産業に多くの教訓を残しました。高度な技術力だけでなく、国際的な認証プロセスへの対応や、グローバル市場での競争力確保の重要性が浮き彫りになりました。

今後、日本の航空機産業がこの経験をどのように活かし、新たな挑戦につなげていくのか。三菱スペースジェットの物語は、日本の航空史に大きな一章を刻むこととなりました。

格納庫に置かれた三菱スペースジェットの試作機。開発凍結後の静かな姿が印象的